批判と怪文書

個人企業として独立するとき,前職退社時の上司から「悪口と怪文書を統計的に分析するといいよ」という生温かいねぎらいのアドバイスをもらった。また悪友からも「周囲からの批判攻撃は業務改善の宝庫である」とも言われた。そのころ独立に備えて辛口の経営評論を読み漁ったら,「苦いニュースにこそ耳を傾けよ」という箴言に行きあたった。

>昭和40年5月、いわゆる“東芝の悲劇”……土光敏夫が再建社長に乗り出し……真っ先に社長室のドアを社員の前に開放、……従来の経営方針に不満を持つ者は、このときとばかり、直接社長に会って、不満をぶちまけた。……この結果、土光はきわめて短時日の間に、東芝の欠陥を知り、再建計画に非常にプラスとなった。
三菱銀行の大御所・加藤武男は、……「怪文書の常としてデマが多い。しかし、お前にとって耳のいたいこともたくさん書かれており、中には傾聴に値するニュースもある。この際、大局的見地に立って……研究して反省すべきだ。……」と訓戒した。
三鬼陽之助 「喧嘩のしかた 準備・実行・後始末」 P38〜,光文社,昭和50年